ひとことも、いやだとは言わなかった。痛かっただろうに怖かっただろうに、新妻くんはただ俺の名前を呼んでしがみついて、必死に俺を受け入れていた。ぼろぼろ泣いて、細い足は突っ張ってシーツを蹴り、背中には何度も爪立ててうめいていたのに、一度も拒絶はしなかった。なんだか妙にそれが、罪悪感だった。

うすっぺらくて骨張った身体、未成熟な白い裸身を俺が汚してしまったようで、終わってからいたたまれなくなった。こんなに悩むのならいっそ、手を出さなければよかったのかもしれない、そんなことまで考え出す始末である。

おかげで寄り添ってくる新妻くんの背にも、手が回せずにいる。どうしたものか、暑さに開け放った窓の向こう、車の行き交うのを聞きながらぼんやりと、考えていた。するとぽそりと、新妻くんが俺を呼んだ。ふくださん、掠れた声にどきりとしてしまう。

「な、なんだ」
「僕うれしかったです」
「え、なにがだ、」
「名前、さっき、呼んでくれました」

言われて探る記憶、そういえば熱の中、昂ぶって呼んだような覚えがある。エイジ、たった三文字のくせに、他とはちがう特別な名前。新妻くんの顔は涙と汗でぐしゃぐしゃで、部屋の暗いのも手伝って表情はよく見えなかったが、細められた目は苦しかったからじゃなく、あるいは微笑んでいたのかもしれない。そう思うとあふれるように熱いものがこみ上げて、俺はそっと手を伸ばしてすぐそばの小さな頭を撫ぜた。新妻くんは身を丸くして、俺の胸にその頭を載せた。

「・・・おやすみなさい」
「ああ、」

そのうち、健やかな寝息の聞こえるようになった。俺はその頃になってようやく落ち着いて、そうか嬉しかったのか、よかったと思った。手を出さなければよかったかも、なんて馬鹿げた考え、とっくにどこかに消えていた。

(しかし体温たけえな、・・・・あ、尻、やわらかい。・・・・・やべ、勃ってきた)


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電車で打ってたのでちょっと短め。
福田たんはツンデレだからきっと名前を呼ぶのも恥ずかしい。
(2009.0619)