久しぶりに流れ星を見ました。
コンビニに福田さんと買い物に行った帰り、キラリ、きれいな流れ星を見ました。夜闇に鮮烈の赤、散り、塵になり、目蓋にかすかな余韻だけのこして、流れ星。

ちょっと歩いてよかったですねといえば、福田さんもうんとうなずきました。家の近くのセブンじゃなく、ちょっと歩いたところにあるミニストップまで行った帰りでした。僕がアイスを食べたかったから、いつもより遠出したのです。福田さんは徒歩、十分もかからないところなのに心配だからとついてきてくれました。おかげで一緒に流れ星、見られたから僕はとてもうれしくなりました。


お付き合い始めて一年とちょっと経ちました。
僕はすこし、すこしだけ背が伸びて、前より福田さんとキスがしやすくなりました。そう言うと福田さんはちょっと照れた顔して、それからうれしそうにこくっと、うなずきます。そうだな、ちっと大きくなったな、頭をわしわし撫でる手はちっとも、変わりません。

あいかわらず広くてあったかい、福田さんの手のひら、今は僕とビニール袋をはんぶんこ。残暑、売れ残った半額の花火が入っています。週末は空いているからその日にやろうと約束しました。楽しみです。


そういえばと、福田さんが信号待ち、言いました。
流れ星、なんかお願いした? 質問に質問で、福田さんはしたんですかと聞けばうーんと首を捻ってぽそり、「来年も一緒にアイス食ってますよーにって」僕はうれしくて、自分の分のアイスを一口福田さんにあげました。ぺろり舐めた福田さんに間接ちゅうですねと言ったら今さら福田さんは恥ずかしそうに目を泳がせます。僕もすこし、恥ずかしくなりました。

信号が青に変わります。歩き出し、渡って右に曲がればもうすぐ、僕のマンションです。福田さんはまた、さっきと同じことを聞きました。ないしょですよとぼやかすと、なんだよ教えろよ俺のアイスもやるからと、チョコソフトを押し付けてきます。間接ちゅうですけどいいです? 聞くとしばらく迷ってから、そっと、手を引きました。僕が笑うと福田さんはちょっとむっとしてから、それから一緒に笑いました。

お願いを教えたくなかったわけじゃないのです。
ただお願いが、なかっただけなのです。

僕は星の数のヒトが生きるこの場所でとなりあるく彼に会えました。福田さんに、会えました。
これ以上お願いすることなんて他になにも、ないのです。


(僕はきっとこの星で一番しあわせな、六十億分の一)


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ボカロ曲の、
「五十億の☆を越えて」(☆→漢字)
「流れ星」(ひらがな)
あたりを聞きながらだとよいかんじで、よめるかと


(2009.0913)