些細な行き違い、口論の勢い、もみくちゃになっていつの間にか布団の攻防にもつれこんでしまったのはもう何度目だろう。冬だというのにじっとりとした掛け布団が重くのしかかる。背後に雄二郎がいると思うとどうにも落ち着かなかった。

俺だって俺なりにこいつのことはまあ好きだし、ちっとは大事にしたいとも思っているのに、気がつくと雄二郎は俺の下で顔をくしゃくしゃにしてむせび泣いているのだからどうしようもない。(俺は福田真太という種類の新種のけだものなんじゃないかとしばらく悩んだ。まじで)

そうして後にのこるのはぐったりした身体と自己嫌悪だけである。サイアクだ。

ちらり、視線だけ向けると月明かりにどこか青白く、雄二郎のすべらかな背はしずかに呼吸に揺れていた。沈黙が気まずくてしかたなく、声をかけた。

「・・・新妻くんのとこ、行かなくていいのかよ、」
「いま何時だと思ってるんだい」

言われて見やれば畳の上、無造作に転がった目覚まし三時を指していた。窓には白が張りつきその向こうには取り込み忘れた洗濯物と月、そして吸い込むような夜が広がっている。ふーと、わざとらしく雄二郎はため息をついた。

「そうかキミは、誠意ある担当に乱暴したあげく、真冬の午前三時に外に放り出すような男だったのか」
「っ、誠意ってとこは、認めねえけど、なんつーか、その、・・わりい」

無理やり押し倒したこととか、やめろって言ってもやめなかったこととか、新妻くんとこに行くって言ってたのに結局行けなくなったこととか、いろいろひっくるめて、俺はあやまった。雄二郎はいつになくしおらしい俺の態度に笑う。腹は立ったが言い返せる立場じゃない。俺は黙っていた。雄二郎はうすく笑いを滲ませながら言った。

「気にするなよ、俺だって気持ちいいし、それに慣れてるしな」
「なんだよそれ、大人のヨユーって感じで、むかつく」
「ま、大人だからね」

だからね、俺に気をつかう必要なんてないんだよ、さらり、そう言われて、不覚にも泣きそうになった。普段はまるで気の利かない、駄目な編集のくせに、こんなときばかりかんたんに、俺の望む言葉を投げつけてくる。(くそ、雄二郎のくせに、)起き上がってにらみつけた。

「・・・・・・むかついた、もっかい犯す」
「はァ!? ち、ちょっと待てよ今日は疲れてるんだもう寝かせ「気は、遣わなくていいんだろ? 」」
「っ! ふく、ぁ・・!」

噛み付いた首筋はぴりと切れて、鉄の味がした。血と汗と雄二郎の混ざった匂いにひどく、欲情した。

(2009.0622)