[携帯サルベージ / 最秋 / 2009.0811]



「シュージン、また背ェ伸びただろ」
「えっ? そうかな、」
「うん、キスがしづらい」
「! そ、そんなとこでわかんのかよ・・(やだな、)」
「これ以上伸びたら襟首つかんでするから」
「それ俺の成長期グッバイっていってんの!?」
「ひざかっくんて、何度もやってると身長減りそうだよな」
「自分が伸びるって選択肢はないのかよ・・・」
「? なんで俺がシュージンのために伸びなきゃなんねえの?」
「(・・・・別れようかな)」


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[日記ログ / 最秋+亜 / 2009.0819]



カサブランカ


記憶の中の少女はいつだって清楚で凛と立ち、綻ぶように微笑んでいた。
そうして俺の知らないあいだにものびのびとその背丈を増し太陽を浴びてまっすぐに、うつくしく育ったのだろう。三年ぶりに再会した彼女はもう、高画質の向こうの人間の片鱗をただよわせていた。


俺だって男だから、かわいい、きれいだと素直に思ったが、久しぶりに会った彼女を見て俺の胸に最初に浮かんだのは、紛れもない、諦めだった。


(サイコーはきっといつか、俺を捨てるだろう)


高校に上がってから流れのままに、名前のない友人以上恋人未満、やることはすべてやってしまった関係をなんとなく保っているが、それもきっと今だけだ。穏やかに、時おりはにかみながら少女と談笑するベッドの上の相棒を見つめる。顔色はあまり優れなかったが目はつよく光を持ち、かがやきさえ放っているように見えた。(亜豆が、いるからだ)


その瞳の奥にそう遠くない俺たちの終わりを見て、俺はしずかに絶望のため息を吐き出した。


サイコーはきっといつか、俺を捨てるだろう。蝶がさなぎを脱ぎ捨てるように。蝶と花、ああ、お似合いじゃないか、皮肉な話だ。俺はたぶん、一瞬の休息のための花だったのだろう、道端に咲いた。大輪の百合に敵うはずもない。


そんなことを考えうつむいている俺を、高木くんどうかしたのと、心配する少女はやはり、その心根までうつくしい花だった。飲み物買ってくる、ふらりと立ち上がって俺は病室を出た。






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そしてここから怒涛の攻真城くん発動です
「俺がシュージンを? 冗談も休み休み言えバカシュージン、馬鹿罪で逮捕するぞ」
「えええ馬鹿なことが罪になるのかよ不条理な! っつうかサイコー俺の扱いひどくね!?」