眩しいと思って、身を翻すとなにかに当たった。おぼろげな意識下手を伸ばすと硬い、骨格をなぞりやわらかな肌を伝う。ああ、ヒトだと思った。体温が気持ちよかったからそのまま撫ぜていれば、パチンと手をたたかれた。不愉快な目覚め。起きると目の前には新妻くんがいた。 「もう平丸先生、いつまでお尻撫でてるですか!」 「だって気持ちよかったから」 「むー、平丸先生ってエッチですよね」 「・・・僕よりいやらしいきみに言われたくない」 言い返すと新妻くんは不機嫌そうに眉を上げた。 「僕はやらしくないです」 「人の上に乗って気持ちよさそうに自分で腰振ってるくせに」 「だって先生動くのめんどくさいってゆうから。ていうか平丸先生、セクハラです」 (・・・・・僕は一応きみの恋人なんだが) そんなことを話しているあいだもしなやかな太腿の裏を撫ぜていると新妻くんは諦めたのか、もうなにも言わなくなった。 何度抱いても飽きなかった。 女の子とちがってやわらかさもなければしとやかさも恥じらいもないが、新妻くんには言いようのないいやらしさがあった。すぐにびくびくとのたうつ細い身体も枯れそうな声もその表情も、飽きというものを感じさせない。 新年会で出会って酒の勢いで家に連れ込んで、こんな関係になって数ヶ月が経つ。吉田氏に見つかっては作家に手を出すんじゃないと怒られるが俺は新妻くん(の身体)を気に入っているし新妻くんはどうやら俺のことを好きらしいし、そういうわけでけっきょくだらだらと続いていた。 ヴヴヴ、床に投げ捨てたスラックスに突っ込んでいた携帯が青く光りながら呼ぶ。身を起こすのはめんどくさかった。 「・・・出なくていいです?」 「いい、どうせ吉田氏だ。放っておけば勝手に家にくる」 「えー僕吉田さんに怒られるの嫌です。こないだも二人で怒られたじゃないですか。出てください」 「朝から吉田氏の声聞きたくない」 「もう、じゃあ僕がとります」 そう言ってシーツについた、新妻くんの手を僕はぐいと引いた。くずおれた上半身は僕の上に落ちてくる。 「もう、先生、」 「いやだ(吉田氏に、朝の掠れた新妻くんの声は、勿体ない)」 「いやだって、平丸せんせ、ん・・」 塞ぐ。よけいなことは言わせない。舌で言葉を押し込むと新妻くんはどんどんと胸をたたいた。しばらくしてようやく離してやった。電話はもう止まっていた。 「・・・先生、僕もう帰「やだ、帰さない」」 細い肩をぎゅうと抱く。折れそうな身体はもがいたが身長の差は大きかった。丸め込んでつかまえた。首筋にかかるため息は諦めを孕んでいた。 「・・・・先生は僕よりずっと年上なのに、やだやだって、我がままばっかりです・・・」 「ああ。悪いか」 「わるいです」 「でも僕の我儘を聞くのがきみは嫌いじゃないじゃないか」 「・・・・・・平丸先生僕はむかつきました。来週は来てあげません」 「! い、いやだ・・・」 「じゃあはやく離してください」 「・・・いやだ・・」 そうして今日も僕と新妻くんは鬼のような顔をした男に怒られる。 (ああもうすこしだけぐしゃぐしゃのシーツでだらだらしていたい) ++++ 平エイだとエイジはいやらしい子だと思ってる 福エイだとなんか清純になる不思議 (2009.0713) ← |