※しょーもないので、ほんとになんでも許せる方だけどうぞ





空気は冷えついていた。無機質な蛍光灯が淡々と照らし、物の少ない四畳半にはただ嗚咽と、とおくの風の音だけがかすかに響き、哀愁に拍車をかけていた。畳にへたりこんだまま、目の前で震える男をぼんやりと見ていた。作業机の前、長い黒髪を乱し身を屈めて、ひどく苦しそうに震えている男は俺の、恋人だった。

どうして、こうなってしまったんだろう。あいかわらずよくはたらかない頭で考える。
俺と彼は職業上、毎週ひどく忙しかったけれどそれなりに、うまくやっていたはずだ。彼の連載を落とさないように俺はできるかぎり編集としてサポートしたし、原稿が終わった翌日には獣みたいに襲いかかってくるのにも耐え、脚をひらいてやった。好きだと言ったことこそほとんどなかったが互いにそう思っているのはよくわかっていたし、わかっていたからこそ、言わなかった。それがいけなかったのだろうか。暗澹たる空白が胸を押しつぶそうとしていた。決定的な一打を与えられたわけなく、じわり、じわりと内側から握りつぶされていく感覚。別れたい、切に、そう思った。

平丸くんはまだ泣いている。俺はその丸まった背に、そっと、告げた。

「…別れようか、平丸くん」

平丸くんははっと顔を上げた。頬を伝った水滴が蛍光灯にきらめいて落ちる。

「…っどうしてです、吉田氏、…っぅ…」
「俺は、もう耐えられないよ」
「そんっ、な、い、いやです、よし、だし、」
「だったら、」

さっさと笑い止んだらどうなんだい。

俺がそう言うと平丸くんは、噴き出した。背は未だくつくつと笑っている。(やめろと言ったのに!)ああもう、いたたまれない!(くそ、笑いすぎて泣くな!)

内股をすり寄せる。履き慣れないスカートはすうすうして心もとなく、襟元のリボンは悲しみを誘い、なによりハイソックスからわずか覗くすね毛がたいへん、痛々しかった。

なにがかなしくて三十にもなって、こんな茶番に付き合わなければならないのか。よりにも、よって、女子高生の制服、だなんて。(ああ、もう、しにたい…)

だいたい平丸くんがわるいのだ。女子高生を登場させたいから制服を見たいなどと、鼻息荒くわがままを言うからこんなことになった。しかたなく買い与えてやったら僕は女子高生が見たかったんだと逆ギレし、もういい吉田氏が着てくださいよと無茶振り。足にしがみついてきてあんまりうっとおしいから着てやれば、このざまだ。さいあくだ。

「…もういいだろ、脱ぐぞ、平丸くん」
「え、だめですよ僕が脱がします」

言うなり笑っていた平丸くんは畳に膝を乗り出し襟に伸びた俺の手を取った。ずいと、押し付けられた唇に黙らされる。膝のあいだに割り込まれ、落ち着きのない手はカーディガンの上からさわさわとわき腹を撫ぜてなしくずしに、畳に押し倒された。リボンは引きちぎられるようにして、ボタンで留めたうちの片側だけ外された。(…525円だぞ、平丸くん)

「…参考にして、スケッチするんじゃなかったの」
「構造を理解するのが大事なのですよ」

嘘つきの漫画家は腹に圧し掛かり、するすると俺の制服を脱がしながら見下ろして眉根に皺を寄せた。

「しかし、男が着ると萎えますね、じっさい」
「…じゃあ勃つなよ」
「自然現象です仕方がない」

わざとらしく腰を押し付け、シャツのあいだに首をつっこみ脇の下を舐める変態を冷めた目で見ながら、俺は真剣に、別れを考えた。しかしそれも一瞬で、スカートのファスナーに手を伸ばされたころにはすっかりうやむやになってしまっていた。
うっすらと浮かぶひたいの汗をうっとおしく首振って流し、ハイソックスと膝の狭間をねちねちと舐られながら、俺はぼんやりと思い出した。(…この、ばかやろう)

(Lサイズを買うよう指定したのは、このためだったな?)



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うお、ぜんぜんだめだ\(^o^)/
頑張ったんだけどこれはどうにもならなかった、ごめん
あと、ほんとは女装注意って書きたかった。ごめん
久々に、失敗した感がつよすぎるので、こんど再挑戦します


(2009.1209)