R18 やってるだけです
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犬みたいに扱われたいんですよと平丸くんがいうのでそうかとうなずいた。すると奴はどうもそれを承諾ととったらしい、次の日には首輪と鎖の繋がったのを買ってきて嬉しそうに自ら首にはめにまにまと俺に渡してみせた。そんな趣味はないと持ち手を床に投げつけると四つん這いになり口でそれをくわえてキラキラした目で見上げてくるので今日の原稿は諦めてバカ犬を躾ることにした。

バカ犬は飼い主がシャワーを浴びる間さえ待てができないという。まあだからこそバカ犬たるのだが、ひとりごちて細い首根っこひっつかみ乱暴に寝室に連れていくと、ベッドに投げ捨てた犬は勝手に腹を見せて服従のポーズをとった。普段の行為の端々から潜在的Mだろうとは薄々感じていたがこれほどの変態とは思わなかった。脱帽の一語に尽きる。

しかしこんな変態を相手にほとんど毎晩盛り合っている俺も立派に同類なのだろう、靴下を脱いで放ると床に立ったまま片足を無造作に突き出した。意を汲み取った忠犬がさっとベッドを降りて床にうずくまる。恭しく俺の右足を持ち上げた。俺はその両手を加減して踏む。ぎゃっと飛び退いたバカ犬を見下した。

「なにしてるの。犬になりたいと君が言ったんだろう? 手を使うなよバカ犬が」

普段ならすみませんと返ってくるのも今日はない。言葉を使えば頭から踏みにじられるのはさすがにバカでもわかったらしい。おとなしく頭をたれ、床に鼻先を押し付けるようにして犬は俺の指先をちろちろ舐めた。くすぐられるような感触がこそばゆく、より前に出すと平丸くんは床に舌が触れるのも気にせず親指を口に含んだ。堅い床に慣れた足の裏を舐られ背筋がぞくりとした。わるくない。

今度は左足により体重をかけて自分から口に突っ込んだ。多少苦しげにはふはふ言いながらも平丸くんは舐めしゃぶるのをやめない。本当に犬みたいだ。すぐにフローリングまで涎だらけになった。指のあいだをぺろりとやられるたび下半身がすこしずつ重くなる。

すると俺より先に我慢が利かなくなったのか平丸くんが突進するようにして俺を床に押し倒した。尻と背に走る痛みは結構、いい。俺が欲しくてたまらないのだとわかるからいい。犬がのしかかってくる。腹が圧迫されて息苦しかった。顔の横に手をついた犬は遠慮なく俺の頬を舐めた。間近で見ると平丸くんの顔はもうべたべたで興奮した。俺も犬になったように互いに舐めしゃぶった。唾液はすぐにどちらのものかわからなくなり、すこし乾くと独特の臭さが鼻をついてくらくらした。

俺の顔をべたべたにして満足した犬はそのまま喉元までたどってそれから一度身を起こして俺を見た。なんだ、とぼんやりした頭で考えているとおもむろにトレーナーの間に頭を突っ込んでくる。ギチギチと布地が引き伸ばされてきつかった。うあ、と体勢を崩しかけ慌てて空を切った手を床にしっかりとつく。俺の服がもぞもぞと動いている、と思えばすぐに見えない舌が俺の胸を這った。うあっ、思わず声が上がる。暗いわけでもないのにどこに触れられるかわからないのは新鮮で、俺は胸をそらして好きなところにその舌先が当たるよう必死に誘導したが犬は焦らすようにわざとそれを避ける。くそ、これは絶対、絶対にわざとだバカ犬め、あ、ああ、今掠ったのに、ああ、ちくしょう!まだるっこしくてひと思いに上を脱ぐと、犬はしてやったりという表情で笑んでいる。

くそ、やられた! 悔しくて床に転がっていた奴の鎖を掴んでぐいと引っ張る。強引にキスをして身体をひっくり返した。下敷きになる俺よりも薄べったい痩身、犬のくせに服など身につけて生意気である。サスペンダーを外しシャツを雑に脱がすとはあはあと荒い息が頭上で聞こえる。笑いながら布越しに付け根をやわく揉んでやった。

「うぁっ!」

仰け反る顎に口づけ、強弱をつけて左手で刺激した。右手は薄い尻を揉む。う、う、と声を抑えているのがむかついたのでことさらに酷く扱いてやった。ズボンまでぐしゃぐしゃに汚した犬はもう焦点が合わず口から垂れる涎を気にする余裕さえ残されていない。これがいい。思考さえできないほど俺にすべてを許した表情がたまらない。胸に吸いつきながらジーンズを脱いだ。平丸くんと同じくらいに張り詰めていた。耳を舐りながら問いかける。

「…ねえ平丸くん、俺のこと好きにしたい?」

宙をさ迷っていた視線がはっと欲望に覚醒する。熱に潤んだ目が俺を見て、こくり、とうなずいた。革の首輪を指で弄ぶと今度はごくりと喉が鳴る。腹の底から笑いがこみ上げた。いいよ、許して、でもね、付け加える。ジッと平丸くんのジッパーを下げた。手の使えない犬のかわりに取り出してやる。浅ましい期待に脈打つのを撫でてその耳に吹き込んだ。

「好きにしていいかわりに絶対いっちゃだめ」
「!」

ああ、なんて情けない顔をするのだろう! これでもかというほどハの字に寄せた眉が、震えの止まらない唇が、今にも泣き出しそうな眼が俺の嗜虐心を最高に満足させる。ほらはやくと今度は俺が下になり脚を開いた。犬は困った顔でしかし欲求には耐えられないのか跪いて脚の間に顔をうずめた。性急に窄まりを舐められて思わず膝が持ち上がる。手が使えない分いつもよりねちっこく解され、舌が襞を割って中に侵入してきただけで俺は達していた。腰をきつい快感が抜け、平丸くんの頭を太腿で思い切り挟んで断続的に射精する。白濁は遠慮なく平丸くんの黒髪を汚した。

はあはあと荒い息を落ち着けていると平丸くんが俺に押し付けてくる。脚を開いてついでに手でも広げてやった。堪えきれなくなって突き入れてくる。待ち望んだ衝撃に低い悲鳴を上げた。ガツガツと余裕なく奥を突かれすぐに勃ち上がった。遠慮なく抉られる摩擦がひどくいい。けれど徐々に速さの上がるのに気づいて俺は平丸くんを止めた。中に埋めたまま律動を制された平丸くんはもうほとんど半泣きで俺を見る。垂れた鎖を握って口づけ、俺は犬を見上げて晒った。

「だめだよ平丸くん、きみはだめって、言っただろう?」
「う…ううー…」
「ほら、分かったら腰振ってよ、俺はまだ足りないんだから」

言葉でなぶると忠犬は言いつけを守って泣きながら俺を抱いた。自分が快楽に飛びそうになると歯を食いしばって動きを止め、俺が目の前でとっぷり吐き出すのを辛そうにじっと見てはまた再開して俺を気持ちよくさせた。言いつけを破ったらどうするという条件もなにも提示していないのに律儀に守る様はたいへん滑稽でバカ犬にふさわしかった。

何度もいかされ俺はひどく満足して鎖を離した。もう寝ようか、言い放つと犬はなんともみっともない顔でくうんと鳴く。僕は明日も朝早いんだよ、一度離した鎖をもう一度手に取って強引に立ち上がらせた。ついでに下半身も勃ち上がらせたまま情けなく平丸くんがついてくる。

汗を軽く拭き、キングサイズのベッドに並んで横になった。平丸くんはあいかわらず落ち着かないようすでそわそわとしている。物足りない? わかりきっているくせにわざと聞いた。振り返った犬は泣きながら自分の指を噛んでいた。どうやらそうしていないと自慰を抑えられないらしい。漫画家の指に傷を作るのはいかん。俺が指を差し出すとそれは噛まず、黙ってシーツにかぶりついていた。他人のそれでは興奮するのだろう。哀れな犬の頭をぽんぽんと撫でてやると身をすりよせてきた。腰に熱が当たるのでぺちんと頭をはたくと再びシーツと愛を育んでいたがそのうち諦めて眠ったようだった。明日はせいぜい遊んでやるか、となりで悠長にそんなことを考える俺は起きたとき一夜の犬から人間に戻った男の盛大な復讐が待っていることを未だ知らない。


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原稿の合間にむしゃくしゃして書いた。鬼畜受は正義だからしかたないよ。
気持ち的に吉平で体的に平吉の一例。

(2011.0308)